2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

音楽することと哲学すること――ピレシュの言葉(3)

今回は体(body)に関するピレシュ言葉を取り上げることにする。メルロ=ポンティは『眼と精神』の中で、「画家は自分の体を世界に貸し与えることによって世界を絵に変えるのである」というヴァレリーの言葉を引いているが、ではピアニストはどうなのであろう…

音楽することと哲学すること――ピレシュの言葉(2)

今回は自由と制限をめぐるピレシュの言葉を取り上げることにする。 ♦ (ピレシュいわく)「完全な自由か完全な秩序(completely free or completely strict)。どちらかの選択ではない。一定の秩序を保ちながら自由にしていいの。楽譜に書かれた制限を理解して…

音楽することと哲学すること――ピレシュの言葉(1)

♦ ポルトガル出身のピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュ(1944生)が、6月10日のNHKの番組に登場した。1970年代にモーツァルトのレコードを聴いて以来ピレシュ(昔はピリスと呼んでいた)のことは一応知っていたが、彼女は特に気になるピアニストではな…

デカルトの決意--(2)自尊心と高邁 その8

♦ いつでも好きな時に透明人間になることのできる魔法の指輪を使って、一介の羊飼い(ギュゲス)がついに王にまで上り詰めるという「ギュゲスの魔法の指輪」の話は、プラトンの『国家』篇に出てくるのであるが、人目を逃れ懲罰を免れさえすれば何をしてもよ…

古楽をめぐって:音楽と時間

昨夜はマラン・マレの生誕を祝うコンサートを聴きに出かけた。茗荷谷のラ・リールは音が柔らかく響き、余韻まではっきり聞こえる、とても良い会場だった。演奏者の方々もバロック音楽の醍醐味を十分に味わわせてくれた。 ♦ さて、ここからは哲学的考察である…