愛と秘密

♦ 昨日の土曜日は吉祥寺のピアノスタジオNOAHでの髙橋全さん(ピアノ)と高橋美千子さん(ソプラノ)のイベントに参加した。天井の高い小さな部屋で、生まのピアノの音色、そして生まの歌声とフランス語の音を堪能する贅沢な時間を過ごしたのであるが、お二人がそれぞれご自身の経歴などについて、それこそざっくばらんに話してくださったのがとても良かった。学校での講義などよりも、アドリブ的な談話の方がより深く聴く者を音楽の内面へと導いてくれることが分かった。

♦ さて、「秘め事」というコンサートのタイトルから、フォーレの Le secret が曲目に含まれることは予め容易に予想できたが、私がこの曲の音楽と詩から連想したのは、「秘すれば花なり秘せずは花なるべからず」ということである。花と同様に、愛=アムールは本質的に秘めたものなのである。

♦ しかし愛=アムールは本質的に内に秘めたものであるが、実は愛ほど表現を求めるものはないのである。というのも、愛は表現されることによって秘密であることをやめるのではなくて、むしろ表現されることによってはじめて、秘められたものとして形作られるからである。愛の表現は何とも逆説的である。フォーレのLe secret を聴きながら私はそんなことを考えた。

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